Report:Sanosuke Harada

共倒れはごめんこうむるよ
試衛館のメンバー(と斎藤)が不始末を起こした時の台詞。近藤派の失策はあくまで近藤派の責任、芹沢派は無関係だという、いかにも芹沢らしい自己中心的な物言いである。しかもこの後、派閥の外にいる斎藤だけを引き抜こうとした。斎藤は誘いを蹴ったが、普通あんないけ好かない高飛車野郎の口車に乗る奴はいないだろう。斎藤を落とすなら、女(なるべくなら清純派)か子供の泣き落としだな。

どっちに転んでも損はない
周到な計算高さと、狡猾さをを感じさせる。損得勘定だけで動くほど、人間は器用ではない。とりわけ斎藤は人一倍不器用な方だと思うのだが、その斎藤をいかにも狡猾ですと言わんばかりの態度で誘うのはどういう意図か。筆者としてはやはり泣き落としで行くべきだと思う。芹沢は例え女にしても清純派ではなさそうだから、無理だとは思うが(笑)。

サムライごっこも良いが、少しは地に足をつけたらどうだ
「切腹装束の浅葱色」の羽織を隊服に推した土方副長に対しての言葉。(正直、筆者としてもあの羽織はあまりに派手すぎて、あれだけはヤだとまで思ったが)それにしても良くこれだけポンポンと人の神経を逆撫でする台詞が浮かぶものだと、たまに感動すら覚える。新選組隊内で実権を握るつもりなら、何故敢えてわざわざ反発させるようなことを言うのか。単にウマが合わないって奴かもな。

死の覚悟のなんたるかも知らぬ輩が、命がけだ武士道だと軽々しく
口にするのがカンに障ったものでな

一見正当性のある意見のようだが、その実他人の覚悟というものをかなり軽視した身勝手な言葉である。天狗党時代にどれだけ死の覚悟をしたか知らないが、軽々しいってアンタも他人を軽々しく扱ってるだろう、と筆者は猛烈に主張したい。

…その冷静な攻撃性を買っているのさ
子猫を守るより、反撃に備える方を優先した斎藤に対して。斎藤は、女にも子供にも今イチ弱いわ、年百年中貧乏クジ引くわ、筆者が食べて平気だった物を食って当たるわで、普段は結構間が抜けているようだが(編集部注:人のことが言えるのか)いざという時は冷静なのだ。しかし、こうした他人の性格のねじけた部分だけを買うところにつくづく歪みを感じる。

新選組はきさまらに改心も償いも求めん。ただ斬って捨てるのみだ!
不逞浪士に対して。芹沢の辞書には、情け容赦とか義理人情とかいう言葉は存在しないらしい。…それにしても、新選組の悪名を広げて歩きたいのだろうか。実際芹沢のおかげでかなり悪評が広まってしまい、町中で痛い視線を浴びることもたびたびという有様だ。芹沢は屯所を3歩出たら騒ぎを起こすような性格で(編注:人のことが言えるのか?)、頭に来ることに腕も立つから、非常にタチが悪い。腕が立つと言えば筆者は一度芹沢に殺されかけた。もしあの時致命傷を負っていたら、死んでも死にきれずに化けて出て「新選組Xファイル」に花を添えたことだろう。

わけもわからずに紛れ込んだ連中もいるようだな。道理でこの騒ぎだ
浪士隊(編注:新選組の前身)に応募して、小石川伝通院で初めて芹沢に会った頃に言った。芹沢を見た周りの人間が騒いでいる時、沖田が「あの人有名なんですか?」と言ったのを聞き止めての言葉である。芸能人(そこそこ有名)に「あんた誰?」と言った時のような反応と言える。っつーかオマエはどこぞのアイドルか。

…この私が、なめられたものだな
言うに事欠いて「この私」。浪士隊の上洛時、近藤(勇)さんが芹沢の組の宿所の手配を落とした(実際には近藤さんじゃないんだが)あとに出た台詞。直後、芹沢は野営と称して宿場町の往来で大篝火を焚きやがった。もう少しで火事になるところだ。あの男には後先というものがないのか(編注:人のことが以下略)。大胆不敵と言えば聞こえがいいが、人間時には辛抱も必要だ。

愚弄するか、若僧!!
篝火を焚いていた芹沢のところに、防寒対策と言ってどてらと湯タンポ代理(猫)を持っていった沖田に対して。確かにあからさまにナメた感じだ。だが他の人間ならともかく沖田だ、結構本気だったのかもしれない。あいつの行動だけは、筆者は未だによくわからない。天才のやることは所詮凡人には理解不能ということなのか(笑)。凡人は凡人同士、(永倉)新八とでも仲良くしておくことにしよう。

どくのはそっちだろう。無礼は許さん、道をあけろ
沖田に突き当たっておいて「往来の邪魔だ」と言った大坂の力士に対しての台詞。芹沢は無礼を働かれることやなめられることに非常な嫌悪を示す。すさまじいプライドの高さが窺われる。この後「どかせるものならどかせてみろ」とタンカを切った力士を、一刀で切り伏せてしまった。筆者や斎藤・沖田・永倉が他の力士を止めなかったら更に犠牲者が増えていたことだろう。全くあの血の気の多さはどうにかならないものか(編注:人の…もういい…)。

身の程を知らぬ下郎どもが
前項の無礼討ちを恨んで、大坂力士たちが棒やら何やらを持って芹沢や筆者らのいる店を囲んだ時。芹沢がこう言って真っ先に斬り込んだ。局長(しかも筆頭)が最初に出ていってどうするよ。新見(錦)が「局長にお怪我があっては隊士の恥」とか言ってたが、だったら出ていく前に止めろよ。
まあしかし、この時の件に関しては筆者も2番目くらい(永倉と僅差)に飛び出してしまったのであまり偉そうな事は言えないのだが。

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