interviewer:Hajime Saitoh

芹沢鴨:
「ほう、君がインタビュー担当になったのかね、斎藤君?」

斎藤一:
「……はあ…芹沢先生が前の担当三人を次々と斬ってしまわなければ、私にお鉢が回ってくることも無かったんですが」

「平隊士の分際でこの私にインタビューなど百年早いのだよ」
「先生、それでも隊士に手を掛けるのは色々マズイので止めて下さい」

沖田総司:
「そうですよ先生、大っぴらにやるのは難なんで、バレないようにこっそりやって下さいね」

「沖田君、君も伊達に人を斬っていないね。だが私はこそこそするのは性に合わないのだよ」
「…沖田さん、それは違う…」
「ほらほら斎藤さん、始まった早々げっそりしてないで、続き続き」
「沖田さん、やっぱり俺と代わってくれないか? こういうのは苦手なんだ…」
「駄目ですよ、私は書記係ですもん。それに斎藤さんの方が芹沢さんに気に入られてるし」
「そう言えば沖田君、最初は写真係だったのに結局駄目だったそうだね」
「あはは、そうなんですよね。何か全部ナナメになっちゃったもんで、編集部に任せたんですよ」
「剣に関しては天才でも、写真はそうは行かなかったか?」
「いえいえ、私は剣しか知りませんから。先生こそ、凄い腕じゃないですか。
不逞浪士を鉄扇で倒した時なんか、感心しましたよ」

「(…今のうちに…)」
「おや斎藤君、どこへ行くのかね?」
「敵前逃亡は士道不覚悟ですよ、斎藤さん♥」
「…敵前って、あんたら味方だろう!」
「さあさあ斎藤君、ここに座りたまえ。濃茶と虎屋の羊羹もあるぞ」
「先生、用意がいいですねえ♥ 私もいただこうかな」
「(聞いちゃいない…)私はお茶を頂きに来たのではありません! インタビュー担当として来たんです!」
「急に開き直ったね(笑)」

「質問でもなんでも、やりますよ。やりゃあいいんでしょう! 先生は以前子猫を可愛がっていましたが、あれは先生の飼い猫なんですか?」
「飼っているよ。捨てられているのを見過ごして置けなくてね。雨の降る日だったしな」
「へえ、芹沢さん、一見乱暴で高飛車で自分勝手で傍若無人に見えるけど、実は優しいんですね!」
「お、沖田さん! なんて命知らずな!」
「まあな。たびたび誤解されるのだが、私は身内には優しいのだ」

「(……ま…前半分(以上)は聞こえてなかったのか? それとも最後の文節さえ褒め言葉なら、芹沢さんにとっては全体も褒め言葉になるのか?? 法則がよくわからない…いやそれ以前に)…猫も先生にとっては身内なんですか?」
「猫も、私の派閥についている連中も、天狗党時代からの同志も私にとっては家族同然なのだよ」
「…あの…猫と同列に並べたら、新見さんが気の毒じゃないですか?」
「何を言うのだ、斎藤君。同列に数えたりするわけが無かろう!」
「す、済みません。そうですよね…」
「猫の方が上だ!」

「……は?」
「…斎藤君、そこで真っ白にならないでくれたまえ。冗談だよ」
「あっはっは、相変わらず真面目ですねえ、斎藤さんは」
「…先生が冗談を言うとは思わなかったもので」
「まあ普段は気難しい感じですもんね。お酒でも入らなきゃ、冗談も言いそうにないですよね」
「ああ、うん、酒でも入らないとな…でも以前俺と呑みに行った時はあんまり変わらなか…
って、ちょっと沖田さん、そこのトックリは何だよ!」

「ああ、これは沖田君ではなくて、私が用意したものだよ」
「先生~! これはインタビューであって、酒盛りじゃないんですよ!」
「気に入った面子と呑む酒は格別だからな。本当はインタビューの後にするつもりだったのだが」

「あとにして下さい!!」
「気にしないでくれたまえ。私のおごりだ」
「そういうことを言ってるんじゃないですよ! もうすぐ終わりますから…」
「気前いいなあ。それにしても、芹沢さんも意外性のある人ですよね。優雅な俳句も詠むし」
「…ああ、えーと…『雪霜に 色よく花の さきがけて 散りても後(のち)に 匂ふ梅が香』でしたっけ。それはそうと沖田さん、もう酔ってる? 顔赤いよ」
「やはり辞世の句は意外性がなくてはな」
「(…い…意外性?「優雅でなくては」の間違いじゃないのか?)」
「あ~、でも意外と言えば、土方さんの句の方が(ぶきっちょすぎて)意外かなあ…」
「……何だと? おのれ土方、和歌でも私と張り合うつもりかー!」
「せ、先生!? どこ行くんですか、まだ途中……もしかして二人とも酔ってる!?」


編注:取材対象が土方歳三氏に和歌の意外性勝負を挑みに行った
ため、インタビューは中断されました。大変申し訳ございません。

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