今月の作品紹介

「無頼」 岩崎陽子 著
月刊ASUKAミステリーDX掲載(1996年12月号~)
「超能力者・妖怪・妖刀、魑魅魍魎跋扈の“新選組Xファイル”」

との触れ込みで始まったこの作品。現在4巻まで発売中。妖怪や死霊が飛び出したり、キャラが「ビジュアル系」と言われるほどに美形揃いだったりするためか、史実の新選組ファンにはあまり受け入れられていない様子だが、隊士たちの「青春」を描いたものとしては非常に高ランク。確かに新選組幹部隊士と言ってもほとんどは20代。青春時代と言っても差し支えあるまい。土方歳三に至っては生涯青春時代と言っても差し支えあるまい(私見)。
最近は当初のオカルト傾向が鳴りをひそめ、斎藤一と沖田総司の友情物語に移行しつつあるので、友情ものを愛する方には特にお薦め。視点を変えて沖田総司と土方歳三のほのぼの信頼関係、もしくは芹沢鴨と新見錦の強烈な信頼関係を楽しむのもひとつの手であろう。人間関係におけるこれからの注目株は斎藤一と高本貞司郎(本名・高木時尾)との恋物語であろうか。某少年漫画の斎藤一では恋物語など想像もつかないが、その辺りはさすが少女漫画、恋という要素が実に自然である。斎藤一様に恋なんて許せないわ! という方も、多分これなら微笑ましく見守れてしまうことであろう。

 

&キャラ紹介


斎藤 一(さいとう はじめ)

本作品の主人公。新選組幹部隊士。生真面目・不器用・主人公という三拍子が揃った結果の「Mr.貧乏クジ」(本人自覚あり)。しかも貧乏クジを引くだけでは飽きたらず、些細なことで落ち込んだり、他人(主に芹沢鴨)のしたことに謂われのない責任を感じたりでたびたび胃を痛めている。が、普段徹底的に最悪の事態を考え尽くしてあるため、実際に何か事件が起きた時には一番冷静(それでいいのか)。剣は無外流。もとは江戸の生まれだが、旗本の三男坊を斬って江戸を離れ、京都で新選組の前身・壬生浪士隊に参加。その後、Mr.貧乏クジの実力を遺憾なく発揮し、前半は奇矯・妖怪の類に関わりまくり、後半のとっかかりでは沖田総司と揉めまくり、さらには全編通して芹沢にアプローチされまくっている。しかも面倒事のほとんどは自らしょい込んだものという筋金入り。恐らく高木時尾との関わりにおいても、その貧乏クジぶりを余すところなく披露してくれることだろうと期待している。


新選組幹部隊士で、局長・近藤勇が江戸で開いていた道場「試衛館」の門下生。剣に関しては所謂天才で、齢二十にして天然理心流免許皆伝。斎藤の友人で、おそらくは親友候補。一見人当たりが良く、誰にでも親切(斎藤曰く「口がうまい」)だが、実はかなり人の好き嫌いが激しいらしい。どうでもいい人には親切で、好きな人には結構いじわるという、最もタチの悪いタイプ。一度怒らせると粘着質で、半年くらい口をきいてくれないこともある。キャラデザインのコンセプトは「病気には見えないが早死にしそうな沖田」だそうだが、今や病気にも見えない上、早死にもしそうにない人と化している。それどころか斎藤よりも長生きして、九十歳代で多くの孫や曾孫の見守る中で息を引き取りそうだ。というか斎藤が神経性胃炎か胃潰瘍で早世しそうな気がしてならない。


沖田 総司(おきた そうじ)


原田 左之助(はらだ さのすけ)

新選組幹部隊士で斎藤の友人。種田流の槍の使い手だが、試衛館に居候していたため、沖田とは同門の仲。喧嘩好きでお祭り好き。熱血で義理人情に厚い、とてもいい奴。割合お人好しなせいか、斎藤・沖田・原田が揃っている場合においてのみ、まれに貧乏クジが彼に回ることがある。妖怪とナメクジが大の苦手。しかしその割にナメクジの種類には詳しく、誰も知らない南国のナメクジの体長や背中の模様まで知っている。これはもしや「いやよいやよも好きのうち」ということだろうか。ゴキブリが嫌いな人が、その名前の由来(「御器被り(ごきかぶり)」の「か」が落ちたもの。ちなみに「御器」とは食器のこと)まで知っているのに似ている(そうだろうか)。キャラデザのコンセプトは「馬賊がはまりそうな原田」。……ばっちり。


新選組初代局長の一人。芹沢と同じく水戸天狗党の出で、神道無念流の使い手。芹沢に対する忠誠心には凄まじいものがあり、天狗党時代に何某かの事件があったことを窺わせる。近藤派が優勢になった新選組を見限り、より芹沢に相応しい場を探して独断で土佐勤王派と接触。その件を土方らに咎められ、芹沢に累を及ぼさない為に料亭「山の緒」で割腹自殺した。
一見して芹沢よりかなり年上に見えるが(芹沢が若いともいう)、実はピチピチ(死)の28歳。髪が少ないのや、顔が老けているのは気苦労が多かったせいだろうか。しかし苦労が絶えなくとも、芹沢先生に全幅の信頼を置かれる立場にいられるのなら、彼はきっと幸福であろう。先生に大事にされるなんて、何だかちょっぴり嫉妬してしまいそうだ(編集部が私見を混ぜるな)。


新見 錦(にいみ にしき)

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